電話ボックスでバイク充電やテレワーク 韓国で公衆電話が次々変身
2021年4月28日 12時00分
携帯電話の普及に伴い、韓国でも消えゆく公衆電話。街角の電話ボックスも年々、姿を消しているが、廃棄される電話ボックスを電動バイクの充電施設や1人用の作業スペースに再利用する取り組みが進んでいる。(ソウル・中村彰宏、写真も)
◆3分で充電、街中でらくらく
「バッテリーを交換するまで3分もかからない。充電が終わるのを待つ必要もない。街中でバッテリーを交換できる場所が増えれば、もっと便利になる」。出前代行会社の李菜晩 代表はこう話す。
通信会社のKTが電動バイクメーカーや自治体と協力し、昨年末の釜山 市を皮切りに充電サービスを開始。充電器の収納ブースとして使われるのが、電話ボックスだ。
電話機を取り外した電話ボックス内に充電設備を設置。一度に8個のバッテリーを収納できる。利用者は充電が完了したバッテリーを取り出してバイクに装着し、使用後のバッテリーを入れれば充電される。
電話ボックスが充電器を雨風から守り、必要な電気設備も公衆電話用に既設されているものを活用できるメリットがある。
充電ブースの位置はアプリで確認でき、バッテリーの充電状態も一目で分かる。店などに戻って充電する必要がなく、会員になればバッテリーは使い放題。一般的なバイクのガソリン代と比べると、30~40%安くなるという。
◆大気汚染対策で増える電動バイク
韓国は「配達できないものはない」といわれるほど出前文化が発達し、多くはオートバイを利用している。韓国内の二輪車の登録台数は今年3月現在、229万台。新型コロナウイルスの流行で出前需要が伸びたこともあり、この1年で4万5000台増加した。
このうち電動バイクは約3万5000台。二輪車は都市部を中心に深刻な大気汚染の一因ともされるが、電動バイクなら大気汚染を低減できるメリットもあり、今後も台数の増加が予想される。KTなどは今年、ソウルをはじめ、仁川 や大邱 など都市部を中心にサービスを広げ、2年以内に全国に5000カ所の充電ブースを設置する計画にしている。
◆コロナ禍で増えるテレワークの個室にも
電話ボックスを1人用のスペースに活用する取り組みもある。ソウル市近郊、城南 市の共有オフィス「ワークアンドオール」。ここでは2つの電話ボックスを設置し、1人用の作業スペースとして試験的に運用している。
使わなくなった電話ボックスを安価で譲り受けて移設し、小さなテーブルやインターネット環境、コンセントなどを整備。コロナ禍で増えたオンライン会議や顧客との通話時も、周りの目や騒音を気にする必要がない。30分、1時間など時間単位で使用でき、予約も可能だ。
よく使用しているという会社員男性は「共有オフィスは人が多いとうるさいこともあるが、中に入れば静かなので集中して作業ができる」と歓迎する。
ワークアンドオールの運営会社では、今後は消毒など防疫を自動でできる機能を追加する予定。同社の崔貞恵 室長は「まずは需要の多い首都圏で運用し、全国に広げていきたい。事業所だけでなく、カフェなどでも展開したい」と話す。
韓国の公衆電話 韓国では1990年代後半から携帯電話が普及し始め、韓国放送通信委員会によると、2020年の普及率は99%に上る。これに伴って韓国内の公衆電話の数は1999年の15万3000台をピークに減少。現在は3万4000台と5分の1近くまで減った。
【関連記事】新幹線の公衆電話 ケータイに押され「終着」
おすすめ情報